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『日本橋』 青空文庫
「おお、冷い、おお、冷い。……雪やこんこ、霰やこんこ。……おお綺麗だ。花が散るよ、花が散るよ。」
仲通の小紅屋の小僧は、張子の木兎のごとく、目を光らして一すくみになった。
火の影ならず、血だらけの抜刀を提げた、半裸体の大漢が、途惑した幟の絵に似て、店頭へすっくと立つと、会釈も無く、持った白刃を取直して、切尖で、ずぶりとそこにあった林檎を突刺し、敵将の首を挙げたるごとく、ずい、と掲げて、風車でも廻す気か、肌につけた小児の上で、くるりくるりとかざして見せたが、
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