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 『薬草取』 青空文庫

 月は山の端《は》を放れて、半腹《はんぷく》は暗いが、真珠を頂いた峰は水が澄んだか明るいので、山は、と聞くと、医王山だと言いました。
 途端にくゎいと狐が鳴いたから、娘は緊乎《しっか》と私を抱く。その胸に額《ひたい》を当てて、私は我知らず、わっと泣いた。
 怖《こわ》くはないよ、否《いいえ》怖いのではないと言って、母親の病気の次第。

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