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『薬草取』 青空文庫
途端にくゎいと狐が鳴いたから、娘は緊乎《しっか》と私を抱く。その胸に額《ひたい》を当てて、私は我知らず、わっと泣いた。
怖《こわ》くはないよ、否《いいえ》怖いのではないと言って、母親の病気の次第。
こういう澄み渡った月に眺めて、その色の赤く輝く花を採って帰りたいと、始《はじめ》てこの人ならばと思って、打明《うちあ》けて言うと、暫《しばら》く黙って瞳《ひとみ》を据《す》えて、私の顔を見ていたが、月夜に色の真紅《しんく》な花――きっと探しましょうと言って、――可《よ》し、可《よ》し、女の念《おもい》で、と後《あと》を言い足したですね。
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