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 『薬草取』 青空文庫

 翌晩《あくるばん》、夜更《よふ》けて私を起しますから、素《もと》よりこっちも目を開けて待った処《ところ》、直ぐに支度《したく》をして、その時、帯をきりりと〆《し》めた、引掛《ひっかけ》に、先刻《さっき》言いましたね、刃《は》を手拭《てぬぐい》でくるくると巻いた鎌一挺《ちょう》。
 それから昨夜《ゆうべ》の、その月の射す窓から密《そっ》と出て、瓦屋根《かわらやね》へ下りると、夕の葉の搦《から》んだ中へ、梯子《はしご》が隠して掛けてあった。伝《つたわ》って庭へ出て、裏木戸の鍵をがらりと開けて出ると、有明月《ありあけづき》の山の裾《すそ》。

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