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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

 境は起つも坐るも知らず息を詰めたのである。
 あはれ、着た衣は雪の下なる薄もみぢで、膚の雪が、却つて薄もみぢを包んだかと思ふ、深く脱いだ襟脚を、すらりと引いて掻合すと、ぼつとりとして膝近だつた懐紙を取つて、くる/\と丸げて、掌を拭いて落したのが畳へ粉のこぼれるやうであつた。

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