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 『婦系図』 青空文庫

 主税はその盲目の娘《こ》と云うのを見た。それは、食堂からここへ入ると、突然《いきなり》客室の戸を開けようとして男の児が硝子扉《がらすど》に手をかけた時であった。――銀杏返しに結った、三十四五の、実直らしい、小綺麗な年増が、ちょうど腰掛けの端に居て、直ぐにそこから、扉《と》を開けて、小児を迎え入れたので、さては乳よ、と見ると、もう一人、被布《ひふ》を着た女の子の、キチンと坐って、この陽気に、袖口へ手を引込《ひっこ》めて、首を萎《すく》めて、ぐったりして、その年増の膝に凭《より》かかっていたのがあって、病気らしい、と思ったのが、すなわち話の、目の病《わる》い娘《こ》なのであった。

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