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 『婦系図』 青空文庫

 乳の目からは、奥に引込んで、夫人の姿は見えないが、自分は居ながら、硝子越に彼方《むこう》から見透《みえす》くのを、主税は何か憚《はば》かって、ちょいちょい気にしては目遣いをしたようだったが、その風を見ても分る、優しい、深切らしい乳は、太《いた》くお主《しゅう》の盲目《めしい》なのに同情したために、自然《おのず》から気が映ってなったらしく、女の児と同一《おなじ》ように目を瞑《ねむ》って、男の児に何かものを言いかけるにも、なお深く差俯向《さしうつむ》いて、いささかも室の外を窺《うかが》う気色《けしき》は無かったのである。

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