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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

百合 ほんとうに、たよりのない身体《からだ》でございます。何にも存じません、不束《ふつつか》ものでございますけれど、貴客《あなた》、どうぞ御ふびんをお懸けなすって下さいまし。(しんみりと学円に向って三指《みつゆび》して云う。)
学円 (引き入れられて、思わず涙ぐむ。)御殊勝ですな。他人のようには思いません。
晃 (同じく何となく胸せまる。涙を払って)さあさあ、親類というお言葉なんだ。遠慮のない処、何にも要らん。御吹聴《ごふいちょう》の鴫焼《しぎやき》で一杯つけな。これからゆっくり話すんだ。山沢、野菜は食わしたいぜ、そりゃ、甘《うま》いぞ。

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