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 『日本橋』 青空文庫

 けれども、いずれそのうち、と云った、地蔵様へ参詣をしたのではない。そこに、小紅屋と云う苺が甘そうな水菓子屋がある。二人は並んでその店頭。帳場に横向きになって、拇指の腹で、ぱらぱらと帳面を繰っていた、肥った、が効性らしい、円髷の女房が、莞爾目迎えたは馴染らしい。
「いらっしゃいまし、……唯今お坊ちゃんがお見えになりましたよ。」
「おや、そうですか、小婢がついて。」

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