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『化鳥』 青空文庫
早《はや》く帰らうとしたけれど気が重くなつて其癖《そのくせ》神経《しんけい》は鋭《するど》くなつて、それで居てひとりでにあくびが出た。あれ!
赤い口をあいたんだなと、自分でさうおもつて、吃驚《びつくり》した。
ぼんやりした梅《うめ》の枝が手をのばして立つてるやうだ。あたりを〓《みまは》すと真《まつ》くらで、遠くの方で、ほう、ほうツて、呼ぶのは何だらう。冴えた通る声で野末《のずゑ》を押ひろげるやうに、啼く、トントントントンと谺《こだま》にあたるやうな響《ひゞ》きが遠くから来るやうに聞こえる鳥の声は、梟《ふくらう》であつた。
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