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 『薬草取』 青空文庫

 母様《おっかさん》の御大病《ごたいびょう》、一刻も早くと、直《すぐ》に、美女ヶ原を後《あと》にしました
 引返す時は、苦《く》もなく、すらすらと下りられて、早や暁《あかつき》の鶏《とり》の声。
 嬉《うれ》しや人里も近いと思う、月が落ちて明方《あけがた》の闇を、向うから、洶々《どやどや》と四、五人連《づれ》、松明《たいまつ》を挙《あ》げて近寄った。人可懐《ひとなつかし》くいそいそ寄ると、いずれも屈竟《くっきょう》な荒漢《あらおのこ》で。

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