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 『婦系図』 青空文庫

(市川菅女。)と莞爾々々《にこにこ》笑って、澄まして袷を掻取《かいと》って、襟を合わせて、ト背向《うしろむ》きに頸《うなじ》を捻《ね》じて、衣紋つきを映した時、早瀬が縁のその棚から、ブラッシを取って、ごしごし痒《かゆ》そうに天窓《あたま》を引掻《ひっか》いていたのを見ると、
「そんな邪険な撫着《なでつ》けようがあるもんですか、私が分けて上げますからお待ちなさい。」
 と云うのを、聞かない振でさっさと引込《ひっこ》もうとしたので、

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