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『婦系図』
青空文庫
「あれ、お待ちなさい」と、下〆《したじめ》をしたばかりで、衝《つ》と寄って、ブラッシを引奪《ひったく》ると、窓掛をさらさらと引いて、端近で、綺麗に分けてやって、前へ廻って覗き込むように瞳をためて顔を見た。
胸の血汐《ちしお》の通うのが、波打って、風に戦《そよ》いで見ゆるばかり、撓《たわ》まぬ膚《はだえ》の未開
紅
、この意気なれば二十六でも、
紅
の色は褪せぬ。
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