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 『婦系図』 青空文庫

 胸の血汐《ちしお》の通うのが、波打って、風に戦《そよ》いで見ゆるばかり、撓《たわ》まぬ膚《はだえ》の未開紅、この意気なれば二十六でも、紅の色は褪せぬ。
 境内の桜の樹蔭《こかげ》に、静々、夫人の裳《もすそ》が留まると、早瀬が傍から向うを見て、
「茶店があります、一休みして参りましょう。」

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