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『婦系図』 青空文庫
「腰を下ろすとよう立てぬで、久しぶりで出たついでじゃ、やっとそこらを見て、帰りに寄るわい。見霽《みはらし》へ上る、この男坂の百四段も、見たばかりで、もうもう慄然《ぞっ》とする慄然《ぞっ》とする、」
と重そうな頭《かぶり》を掉《ふ》って、顔を横向きに杖を上げると、尖《さき》がぶるぶる震う。
こなたに腰掛けたまま、胸を伸して、早瀬が何か云おうとした、(構わず休らえ、)と声を懸けそうだったが、夫人が、ト見て、指を弾いて禁《と》めたので黙った。
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