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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「利かぬ気の親仁じゃ、お前様、月夜の遠見に、纏《まとま》ったものの形は、葦簀張《よしずばり》の柱の根を圧えて置きます、お前様の背後《うしろ》の、その石〓《いしころ》か、私《わし》が立掛けて置いて帰ります、この床几の影ばかり。
 大崩壊《おおくずれ》まで見通しになって、貴女《あなた》の姿は、蜘蛛巣ほども見えませぬ。それをの、透かし透かし、山際に附着《くッつ》いて、薄墨引いた草の上を、跫音を盗んで引返《ひっかえ》しましたげな。

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