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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 大崩壊《おおくずれ》まで見通しになって、貴女《あなた》の姿は、蜘蛛巣ほども見えませぬ。それをの、透かし透かし、山際に附着《くッつ》いて、薄墨引いた草の上を、跫音を盗んで引返《ひっかえ》しましたげな。
 嘉吉をどう始末さっしゃるか、それを見届けよう、という、爺《じじい》どのの了簡でござります。
 荷車はの、明神様石段の前を行けば、御存じの三崎街道、横へ切れる畔道が在所の入口でござりますで、其処へ引込んだものでござります。人気も穏なり、積んだものを見たばかりで、鶴谷様御用、と札の建ったも同一《おなじ》じゃで、誰も手の障《さ》え人《て》はござりませぬで。

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