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『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む
山王様の丘へ上りますと、一目に見えます。火の手は、七條にも上がりまして、ぱち/\ぱん/\と燃る音が手に取るやうに聞えます。……あれは山間の瀧か、いや、ぽんぷの水の走るのだと申すくらゐ。此の大南風の勢では、山火事に成つて、やがて、こゝもとまで押寄せはしまいかと案じますほどの激しさで、駈けつけるものは駈けつけます、騒ぐものは騒ぐ。私なぞは見物の方で、お社前は、おなじ夥間で充満でございました。
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