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 『婦系図』 青空文庫

 振返って、来た方を見れば、町の入口を、真暗《まっくら》な隧道《トンネル》に樹立《こだち》が塞いで、炎のように光線《ひざし》が透く。その上から、日のかげった大巌山が、そこは人の落ちた谷底ぞ、と聳え立って峰から哄《どっ》と吹き下した。
 かつ散る、靡いたのは、夫人の褄と軒の鯛で、鯛は恵比寿《えびす》が引抱《ひっかか》えた処の絵を、色は褪せたが紺暖簾《こんのれん》に染めて掛けた、一軒(御染物処《おんそめものどころ》)があったのである。

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