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 『国貞えがく』 青空文庫

 「何んじゃ。」
 と言う太い声。箱のような仕切戸から、眉の迫った、頬の膨れた、への字の口して、小鼻の筋から頤へかけて、べたりと薄髯の生えた、四角なを出したのは古本屋の亭主で。……このと、その時の口惜《くやし》さを、織次は如何にしても忘れられぬ。

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