検索結果詳細
『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
それから、抜かっしゃりましたものらしい、少し俯向いて、ええ、やっぱり、顔へは団扇を当てたまんまで、お髪の黒い、前の方へ、軽く簪をお挿なされて、お草履か、雪駄かの、それなりに、はい、すらすらと、月と一所に女浪のように歩行《ある》かっしゃる。
これでまた爺どのは悚然《ぞっ》としたげな。のう、如何な事でも、明神様の知己《ちかづき》じゃ言わしったは串戯《じょうだん》で、大方は、葉山あたりの誰方のか御別荘から、お忍びの方と思わしっけがの。
268/1510
269/1510
270/1510
[Index]