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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 それから、抜かっしゃりましたものらしい、少し俯向いて、ええ、やっぱり、顔へは団扇を当てたまんまで、お髪の黒い、前の方へ、軽く簪をお挿なされて、お草履か、雪駄かの、それなりに、はい、すらすらと、月と一所に女浪のように歩行《ある》かっしゃる。
 これでまた爺どのは悚然《ぞっ》としたげな。のう、如何な事でも、明神様の知己《ちかづき》じゃ言わしったは串戯《じょうだん》で、大方は、葉山あたりの誰方のか御別荘から、お忍びの方と思わしっけがの。

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