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 『海神別荘』 華・成田屋

美女  父は涙にくれました。小船が波に放たれます時、渚の砂に、父の倒(たおれ)伏しました処は、あの、ちょうど夕月に紫の枝珊瑚を抱きました処なのです。そして、後の歎(なげき)は、前の喜びにくらべまして、幾十層倍だったでございましょう。
公子  じゃ、その枝珊瑚を波に返して、約束を戻せば可かった。
美女  いいえ、ですが、もう、海の幸も、枝珊瑚も金銀に代り、家蔵に代っていたのでございます。

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