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 『婦系図』 青空文庫

 目で聞くごとくぱっちりと、その黒目勝なのを〓《みは》ったお妙は、鶯の声を見る時と同一《おんなじ》な可愛い顔で、路地に立って〓《みま》わしながら、橘に井げたの紋、堀の内講中《こうじゅう》のお札を並べた、上原《かんばら》と姓だけの門札《かどふだ》を視《なが》めて、単衣の襟をちょいと合わせて、すっとその格子戸へ寄って、横に立って、洋傘《ひがさ》を支いたが、声を懸けようとしたらしく、斜めに覗き込んだ顔をらめて、黙って俯向いて俯目《ふしめ》になった。口許《くちもと》より睫毛が長く、日にさした影は小さく軒下に隠れた。

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