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『夜叉ヶ池』 青空文庫
鯉七 (ばくばくと口を開けて、はっと溜息《ためいき》し)ああ、人間が旱《ひでり》の切なさを、今にして思当った。某《それがし》が水離れしたと同然と見える。……おお、大蟹、今ほどはお助け嬉しい、難有《ありがた》かったぞ。
蟹五郎 水心、魚心だ、その礼に及ぼうかい。また、だが、滝登りもするものが、何じゃとて、笠の台に乗せられた。
鯉七 里へ出る近道してな、無理な流《ながれ》を抜けたと思え。石に鰭が躓《つまず》いて、膚捌《はださばき》のならぬ処を、ばッさりと啖《くら》った奴よ。
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