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『婦系図』 青空文庫
「私、そこへ行っても可いかい?」
小芳が急いで縁づたいで、障子を向うへ押しながら、膝を敷居越に枕許。
枕についた肩細く、半ば掻巻を藻脱けた姿の、空蝉《うつせみ》のあわれな胸を、痩せた手でしっかりと、浴衣に襲《かさ》ねた寝衣《ねまき》の襟の、はだかったのを切なそうに掴みながら、銀杏返しの鬢の崩れを、引結《ひきゆわ》えた頭《かしら》重げに、透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけて、吻《ほっ》と今呼吸《いき》をしたのはお蔦である。
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