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 『薬草取』 青空文庫

 立って追おうとすると、岩に牡丹《ぼたん》の咲重《さきかさな》って、白き象《ぞう》の大《おおい》なる頭《かしら》の如き頂《いただき》へ、雲に入《い》るよう衝《つ》と立った時、一度その鮮明《あざやか》な眉《まゆ》が見えたが、月に風なき野となんぬ。
 高坂は〓《どう》と坐した。
 かくて胸なる紅《くれない》の一輪を栞《しおり》に、傍《かたわら》の芍薬《しゃくやく》の花、方《ほう》一尺なるに経《きょう》を据《す》えて、合掌《がっしょう》して、薬王品《やくおうほん》を夜もすがら。

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