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『縁結び』 青空文庫
「山頬《やまぎわ》の細道を、直様《すぐさま》に通るに、年の程十七八計《ばかり》なる女房《にょうぼう》の、赤き袴に、柳裏《やなぎうら》の五衣《いつつぎぬ》着て、鬢《びん》深《ふか》く鍛《そ》ぎたるが、南無妙。
山の端《は》の月に映《えい》じて、ただ独り彳《たたず》みたり。……これからよ、南無妙。
女ちと打笑うて、嬉《うれ》しや候。さらば御桟敷《おんさじき》へ参り候《そうら》わんと云いて、跡《あと》に付きてぞ歩みける。羅綺《らき》にだも不勝姿《たえざるすがた》、誠《まこと》に物痛《ものいたわ》しく、まだ一足も土をば不蹈人《ふまざるひと》よと覚えて、南無妙。
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