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『歌行燈』
従吾所好
「然うだ、成程新地〈くるわ〉だつた。」と何故か一人で納得して、気の抜けたやうな片手を支く。
「お師匠さん、あんた、これから其の音声〈のど〉を芸妓屋の門で聞かしてお見やす。真個〈ほん〉に、人
死
が出来ようも知れぬぜな。」と襟の処で、塗盆をくるりと廻す。
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