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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 (怪物《ばけもの》!)というかと思うと、ひょいと立って、またばたばたと十足《とあし》ばかり、駆戻って、うつむけに突《つ》んのめったげにござりまして、のう。
 爺《じじい》どのは二度吃驚《びっくり》、起ちかけた膝がまたがっくりと地面《じべた》へ崩れて、ほっと太い呼吸《いき》さついた。かっと成って浪の音も聞えませぬ。それでいて――寂然《しん》として、ばかり動きます耳に響いて、秋谷へ近路のその山づたい。鈴虫が音を立てると、露が溢れますような、佳い声で、そして物凄う、

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