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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 爺《じじい》どのは二度吃驚《びっくり》、起ちかけた膝がまたがっくりと地面《じべた》へ崩れて、ほっと太い呼吸《いき》さついた。かっと成って浪の音も聞えませぬ。それでいて――寂然《しん》として、海ばかり動きます耳に響いて、秋谷へ近路のその山づたい。鈴虫が音を立てると、露が溢れますような、佳い声で、そして物凄う、
    (此処は何処の細道じゃ、
          細道じゃ。

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