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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 引越しをするごとに、「雀はどうしたろう。」もう八十幾《いく》つで、耳が遠かった。――その耳を熟《じっ》と澄ますようにして、目をうっとりと空を視《なが》めて、火桶《ひおけ》にちょこんと小さくいて、「雀はどうしたろうの。」引越しをするごとに、祖のそう呟いたことを覚えている。「祖《おばあ》さん、一所に越して来ますよ。」当てずッぽに気安めを言うと、「おお、そうかの。」と目皺を深く、ほくほくと頷いた。

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