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 『春昼』 泉鏡花を読む

「大蛇が顋を開いたやうな、真赤な土の空洞の中に、づほらとした黒い塊が見えたのを、鍬の先で掻出して見ると――甕で。
 蓋が打缺けて居たさうでございますが、其処からもどろ/\と、其の丹色に底澄んで光のある粘土やうのものが充満。
 別に何んにもありませんので、親仁殿は惜気もなく打覆して、最う一箇あつた、それも甕で、奥の方へ縦に二ツ並んで居たと申します――さあ、此の方が真物でござつた。

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