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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

百合 (人形を抱き、媚《なまめ》かしき風情にて戸を開き戸外《こがい》に出づ。)夜の長い事、長い事……何の夏が明易《あけやす》かろう。坊やも寝られないねえ、――お月様幾つ、お十三、七つ――今も誰やら唄うて通ったのをお聞きかい、――山を川にしょ――ああ、この頃では村の人が、山を川にもしたかろう、お気の毒だわねえ。……まあ、良い月夜、峰の草も見えるような。晃さん、お客様の影も、あの、松のあたりに見えようも知れないから、鐘堂《かねつきどう》へ上《あが》りましょうね。……ひょっとかして、袖でも触って鳴ると悪いね、田圃《たんぼ》の広場へ出て見ようよ。(と小屋のうらに廻って入る。)

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