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 『婦系図』 青空文庫

 余り意外な事の体に、答うる術《すべ》なく、黙って流眄《ながしめ》に見ていたが、果しなく頭《こうべ》も擡《もた》げず、突いた手に畳を掴んだ憂慮《きづかわ》しさに、棄ても置かれぬ気になって、
「貴下、まあ、更《あらた》まって何でございますの。」
 とは云ったが、思入った人の体に、気味悪くもなって、遁腰《にげごし》の膝を浮かせる。

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