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 『婦系図』 青空文庫

「貴下、まあ、更《あらた》まって何でございますの。」
 とは云ったが、思入った人の体に、気味悪くもなって、遁腰《にげごし》の膝を浮かせる。
「失礼な事を云うようですが、今日の催《もよおし》はじめ、貴女方のなさいます慈善は、博くまんべんなく情《なさけ》をお懸けになりますので、旱《ひでり》に雨を降らせると同様の手段。萎《な》えしぼんだ草樹も、その恵《めぐみ》に依って、蘇生《いきかえ》るのでありますが、しかしそれは、広大無辺な自然の力でなくっては出来ない事で、人間業《わざ》じゃ、なかなか焼石へ如露《じょろ》で振懸けるぐらいに過ぎますまい。」

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