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『婦系図』
青空文庫
御存じの風来者でありますけれども、早瀬が一生の恩に被《き》ます。」
と拳《こぶし》を握り緊《し》めて云うのを、半ば驚き、半ば呆れ、且つ恐れて聞いていたようだった。重かった夫人の眉が、ここに至ると微笑《ほほえみ》に開けて、深切に、しかし躾《たしな》めるような優しい調子で、
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