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 『春昼後刻』 泉鏡花を読む

「ね、上手でせう。此処等の人達は、貴下、玉脇では、絵を描くと申しますとさ。此の土手へ出ちや、何時までも恁うして居ますのに、唯居ては、谷戸口の番人のやうでをかしうござんすから、いつかツからはじめたんですわ。
 大層評判が宜しうございますから……何ですよ、此頃に絵具を持出して、草の上で風流の店びらきをしようと思ひます、大した写生ぢやありませんか。
 此の円いのが海、此の三角が山、此の四角いのが田圃だと思へばそれでもようござんす。それから○い顔にして、□い胴にして△に坐つて居る、今戸焼の姉様だと思へばそれでも可うございます、袴を穿いた殿様だと思へばそれでも可いでせう。

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