検索結果詳細


 『星あかり』 泉鏡花を読む

 引き息で飛着いた、本堂の戸を、力まかせにがたぴしと開ける、屋根の上で、ガラ/\ガラといふ響。瓦が残らず飛上がつて、舞立つて、乱合つて、打破れた音がしたので、はツと思ふと、目が眩むで、耳が聞えなくなつた。が、うツかりした、疲れ果てた、倒れさうな自分の身体は、……夢中で、色の褪せた、天井の低い、皺だらけな蚊帳の片隅を掴んで、暗くなつた灯の影に、透かして蚊帳の内を覗いた。

 31/36 32/36 33/36


  [Index]