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 『日本橋』 青空文庫

 そこに紅梅の風情は無いが、姿見に映る、江一格子の柳が一本。湯上りの横櫛は薄暗い露地を月夜にして、お孝の名はいつも御神燈に、緑|点滴るばかりであった。けれども、ここの露地口と、分けて稲葉家のその住居とに、少なからず、ものの陰気な風説がある。
 以前、仲之町の声妓で、お若と云った媚かしい中年増が、新川の酒問屋に旦那が出来たため色を売るのは酷い法度の、その頃の廓には居られない義理になって場所を替えた檜物町。

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