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 『日本橋』 青空文庫

 廓に馴れた吾妻下駄、かろころ左褄を取ったのを、そのままぞろりと青畳に敷いて、起居に蹴出しの色|縮緬。伊達巻で素足という芸者家の女房。むかし古石場の寄子ほど、芸者の数を二階に抱えて、日本橋に芽生えの春。若菜家の盛を見せた。夏の素膚の不断の絽明石、真白に透く膚とともに、汗もかかない帯の間に、いつも千円束が透いて見える、と出入りの按摩が目を剥いたのが、その新川の帳尻に、柳の葉の散込むのが秋風の立つはじめ。金気|蕭条としてたちまち至る殺風景。やけでお若は浮気をする。紐がつく、蔦が搦む、蜘蛛の巣が軒にかかる、旦那は暴れる、お若は遁げる。追掛廻して殺すと云う。

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