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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

 撃ちましたのは石松で……親仁が、生計の苦しさから、今夜こそは、何うでも獲ものをと、しとぎ餅で山の神を祈つて出ました。玉味噌を塗つて、串にさして焼いて持ちます、その握飯には、魔が寄ると、申します。がり/\橋と言ふ、其の土橋にかゝりますと、お艶様の方で人が来るのを、よけようと、水が少いから、つい川の岩に片足をおかけなすつた。桔梗ヶ池の怪しい奥様が、水の上を横に伝ふと見て、パツと臥打に狙をつけた。俺は魔を退治たのだ、村方のために、と言つて、いまもつて狂つて居ります。――
 旦那、旦那、旦那、提灯が、あれへ、あ、あの、湯殿の橋から、……あ、あ、ああ、旦那、向うから、私が来ます、私とおなじ男が参ります。や、並んで、お艶様が。」

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