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『春昼』 泉鏡花を読む
「先づお茶を一ツ。御約束通り渋茶でござつて、碌にお茶台もありませんかはりには、がらんとして自然に片づいて居ります。お寛ぎ下さい。秋になりますると、これで町へ遠うございますかはりには、栗柿に事を缺きませぬ。烏を追つて柿を取り、高音を張ります鵙を驚かして、栗を落してなりと差上げませうに。
まあ、何よりもお楽に、」
と袈裟をはづして釘にかけた、障子に緋桃の影法師。今物語の朱にも似て、破目を暖く燃ゆる状、法衣をなぶる風情である。
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