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 『春昼』 泉鏡花を読む

 庵室から打仰ぐ、石の階子は梢にかゝつて、御堂は屋根のみ浮いたやう、緑の雲にふつくりと沈んで、山の裾の、縁に迫つて萌葱なれば、あま下る蚊帳の外に、誰待つとしもなき二人、煙らぬ火鉢のふちかけて、ひら/\と蝶が来る。
「御堂の中では何んとなく気もあらたまります。此処でお茶をお入れ下すつた上のお話ぢや、結構過ぎますほどですが、あの歌に別れて来たので、何んだかなごり惜い心持もします。」

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