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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 件の大崩壊《おおくずれ》の海に突出《つきい》でた、獅子王の腹を、太平洋の方から一町ばかり前途《ゆくて》に見渡す、街道端《ばた》の――直ぐ崖の下へ浪が打寄せる――江の島と富士とを、簾に透かして描いたような、一寸した葭簀張《よしずばり》の茶店に休むと、媼が口の長い鉄葉《ブリキ》の湯沸《ゆわかし》から、渋茶を注いで、人皇《にんおう》何代の御時かの箱根細工の木地盆に、装溢《もりこぼ》れるばかりなのを差出した。

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