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 『国貞えがく』 青空文庫

 それが舞台へ懸る途端に、ふわふわと幕を落す。その時木戸に立った多勢の方を見向いて、
 「うふん。」といって、目を剥いて、脳天から振下《ぶらさが》ったような、い舌をぺろりと出したのを見て、織次は悚然《ぞっ》として、雲の蒸す月の下を家へ遁帰《にげかえ》った事がある。

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