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『雛がたり』
青空文庫
色白で、赤い半襟をした、人柄な島田の娘が唯一人で店にいた。
――これが、名代の阿部川だね、一盆おくれ。――
と精々喜多八《きだはち》の気分を漾わせて、突出し店の硝子戸の中に飾った、五つばかり装ってある朱の盆へ、突如《いきなり》立って手を掛けると、娘が、まあ、と言った。
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