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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 寝る時、上人は帯を解かぬ、勿論衣服も脱がぬ、着たまゝ円くなつて俯向形に腰からすつぽりと入つて、肩に夜具の袖を掛けると手を突いて畏つた、其の様子は我我と反対で、顔に枕をするのである。
 程なく寂然として寐に就きさうだから、汽車の中でもくれ/\いつたのは此処のこと、私は夜が更けるまで寐ることが出来ない、あはれと思つて最う暫くつきあつて、而して諸国を行脚なすつた内のおもしろい談をといつて打解けて幼らしくねだつた。

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