検索結果詳細


 『日本橋』 青空文庫

 やがて風説も遠退いて、若菜家は格子先のその空地に生える小草に名をのみ留めたが、二階づくりの意気に出来て、ただの住居には割に手広い。……ここで、一度待合になった処、開店の晩に、酔って裏二階から庇合へ落ちて、黒塀の忍返しにぶら下って、半死半生に大怪我をした客があって、すぐに寂れて、間もなく行方知れずそれは引越す。
 一度、勤人の堅気が借りて、これは無事。ただし商館通いであったが、旅順とやらの支店の方へ勤がえになって、貸家札。
 時に二割方家賃をあげた。近所では驚いた。差配の肚は大きかった。

 333/2195 334/2195 335/2195


  [Index]