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 『日本橋』 青空文庫

 勿論、開いたでもなければ、誰も居ない。……これを見たもの、聞いたもの。
 やがて風説も遠退いて、若菜家は格子先のその空地に生える小草に名をのみ留めたが、二階づくりの意気に出来て、ただの住居には割に手広い。……ここで、一度待合になった処、開店の晩に、酔って裏二階から庇合へ落ちて、黒塀の忍返しにぶら下って、半半生に大怪我をした客があって、すぐに寂れて、間もなく行方知れずそれは引越す。

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