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 『国貞えがく』 青空文庫

 「うふん。」といって、目を剥いて、脳天から振下《ぶらさが》ったような、紅い舌をぺろりと出したのを見て、織次は悚然《ぞっ》として、雲の蒸す月の下を家へ遁帰《にげかえ》った事がある。
 人間ではあるまい。鳥か、獣か、それともやっぱり土蜘蛛の類かと、訪ねると、……その頃六十ばかりだった織次の祖《おばあ》さんが、
 「あれはの、二股坂の庄屋殿じゃ。」といった。

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